ハンドクリームの中身を誰かが勝手に使ったにしても、使う量が多すぎるではないか。
その謎は2日後に解けた。
新しいハンドクリームの蓋を開け、4本の指につけてなめているNさんを、寮母さんが発見したのです。
Nさんは74歳の女性で、1週間前に自宅から入園してきたばかりです。
家族の話では、呆けてはいるが、おとなしくて手のかからない人だとのことで、実際、入所前訪問でもそう見えたという。
「じゃあ、6号室の植木の葉っぱがなくなったのも、Nさんが食べたんじゃない?」
「Kさんがこの間『おやつの玉子ボーロがなくなった』って騒いでたけど、Nさんのせいかしらね」
なかには濡れ衣もあったかもしれないが、そういえば、思いつくことが次々と出てくる。
「寮母室の流しの三角コーナーのお茶の葉が、いつの間にかきれいになくなっていたわよ」
「あんな物食べるかね?」
「ハンドクリームよりは食べやすいわよ」
と言うのは、自分もハンドクリームをなめてみた、という若い寮母のSさんです。